日本の会社員、いわゆる「サラリーマン」にはある一つのことに特化したスペシャリストよりもいろんなことが平均的にできるジェネラリストの方が多いように思いますが、外資系ではスペシャリストの方が重宝される傾向にあります。
それにはいくつかの要因がありますが、今回は何で日本はジェネラリストで外資系はスペシャリストなのか、外資系を目指すならどちらになるべきなのかについて書いてみたいと思います。
スペシャリストがたくさん集まるとすごい力が発揮できる
ある一つのことに特化した人、例えばスキルAが天才的だけど他は何もできない人、同じくスキルBだけの人、スキルCだけの人、スキルDだけの人が集まったら、A〜Dの全てで天才的な力が発揮できることになります。それぞれの人ができないことは他の人がやるから問題ありません。
これが欧米の外資系の考え方です。1人の人が全てのことを平均的にできる必要はないという考えです。
一方日本はというと、1つのことだけに秀でた人よりも全てのことが平均的にできるジェネラリストの方が重宝される傾向にある気がします。
何でも平均的にできるジェネラリストが集まっても平均以上の力は発揮できない
もちろん、その人個人で考えた時、多くのことが全て平均並みにできることは素晴らしいことです。1人で何でもできるということになりますからね。
でもA〜Dのスキルが平均的にでできる人が何人も集まった組織だったらどうでしょう?業界でイノベーションを巻き起すにはそれぞれの分野で天才的な力を発揮しないといけないのに、彼らは全ての能力が平均止まりです。
もちろん平均的なスキルの中にも特徴や強みはあって、例えば平均的にエクセルが使いこなせる人でも1人は関数に強い、1人は複雑なグラフ作成に強いなど組み合わせるとそれなりの力を発揮することもありますが、それでもやっぱりそれが天才的なレベルになるかというと少し疑問です(エクセルは道具なので例えが悪いですがあしからず)。
このように、ジェネラリストが集まっても、やはり天才的なひらめきを生み出すのは難しいのではないかというのが外資系ではスペシャリストの方が重宝される理由だと思います。
わかってる。わかってはいる・・・。でも、どうしてもジェネラリストばかり雇ったり評価してしまうし、自分自身もジェネラリストだ・・・!という管理職の方は多いのではないでしょうか?
それにはきちんと理由があります。
日本にジェネラリストが多い理由
日本では、何をするにも常に他人と同じように行動することを求められているように感じます。そして、私はこれこそがジェネラリストが多い社会を作り出している要因なのではないかと考えています。
たいていの人が、周囲と同じように大学まで行って同じように会社に入るという敷かれたレールの上を歩くことを求められますよね。そして、そこからはみ出すと肩身の狭い思いをすることもあります。
では、ジェネラリストが多くなる要因を一つ一つ見てみましょう。
学歴偏重主義
まず、日本は学歴偏重主義です。最近、どこかで「親が子供の大学にこだわるのは大学受験が一番リスクの少ない投資だから」と読みましたが、確かにその通りだと思います。
例えば、大学に行かずに歌手を目指すのと大学に行くのではどちらが失敗しない確率が高いでしょうか?大学に行った場合ですよね。
このため、親は子供が大学に行かないというリスクの高い進路を選択することを好まず、大学に行かせたがるのです。こうしてみんな同じものを目指すことで競争が生まれ、大学が一種のブランドになります。
自立心を養う教育をすれば子供も大学以外の道を真剣に模索するようになりますが、親はその教育に注力するよりも大学という安全な投資に注力する傾向にあり、子供はとにかくゴールはいい大学に入ることだと日々刷り込まれます。音楽やスポーツなどいろんな習い事をさせる親もいますが、大多数は将来その仕事をさせるために習わせているのではないでしょう。
ちなみに、ドイツでは大学進学率2割という驚くべき数字があるのはご存知でしょうか?これは大学に行けないからとか学力が低いからではありません。ドイツでは小学校低学年から自分の適性を意識した教育を徹底し、小学校4年生にはある程度進路を決めなければならないので、そこから先も大学には限らず職業学校や専門学校など思い思いの道を歩むことになるのです。
日本では自分がやりたいことを見つけるための自立心は育ちませんし親も大学に行かせたがるので、結局多くの人は大学に行きます。そして、社会に出てからもスキルや特性より大学というすでに確立されたブランドの方が評価されやすいため、やりたいことを考えるよりもとにかく学力を高めるという学歴重視の社会になっているんですね。
個性よりも集団行動できることの方が評価される
更に、大学という安全な投資に限らなくとも、日本では昔から長いものに巻かれろとか右にならえとか、集団に寄り添ってなるべく個性が目立たないように行動することが美徳とされています。
昔から言われなかったでしょうか?「人と違うことをするのはやめなさい!ちゃんとみんなと同じように行動しなさい!」と。
教育の現場でも、他の子と違うことをするよりもみんなと同じように行動できることが評価されるので、これでは人と違う道を自分で切り開くという意志は育ちません。
親としても、大学を選ぶのが安全だという以外にも、自分の子供が他の人と違うことをするのは恥ずかしい、みんなと同じように大学に行ってくれた方が安心だという心理も少なからずあるのではないでしょうか。
こうして国民は何でも平均的にできるサラリーマンに
このように、学力向上に注力した教育と集団主義を経て、国民は全ての能力を平均的に兼ね備えた立派なサラリーマンに育ちます。
業務を忠実にこなし、能力も全て平均以上というジェネラリストはもちろん素晴らしいことでもあります。特に平均的な能力が多く求められる大企業ではそういう人材も相当数必要でしょう。
でも、現状の日本はあまりにジェネラリストが多くて国全体としてスペシャリストが少し足りないのではないかな、というのが私の印象です。
ジェネラリスト上司はスペシャリストの扱い方がわからない
さて、これだけジェネラリストの多い日本では、メンバーを評価する上司自身も大半はジェネラリストです。経営者ともなればスペシャリストタイプが多いので別ですが、それ以下の役員や管理職、一般社員は多くがジェネラリストです。
そんな中に少数のスペシャリストがいたらどうでしょうか?
プログラミングは天才的で他の人では決して考えつかないような複雑な処理を一夜にして書き上げることができるが、社内の稟議システムを使ったり交通費を清算するようなみんなできる当たり前のことが苦手。
スペシャリストとは、極端に言うとこんな人です。
この人を評価する日本企業の上司は大変です。一部の能力は非の打ち所がないほど突出していますが、他の人はみんなできることが苦手なのです。ジェネラリストの目からは、突出しているところの素晴らしさよりも、他の人ができることが苦手であるというネガティブ面に目が行ってしまいがち。評価基準自体がジェネラリストに有利にできていることもあるでしょう。
さらに、1つの能力だけが突出している人を将来リーダーや管理職にすることがジェネラリストにはなかなかイメージしづらいため、スペシャリストはジェネラリストである上司達から思うように評価してもらえず、昇進しづらいというジレンマがあるのではないかと感じます。
日々の業務でも、日本の管理職は他の社員がみんなやっている一般的な業務をつい全員に頼んでしまいがちなので、スペシャリストにも同じように頼んでしまう傾向にあります。そしてそれができないと、例えそれがその人の担当業務でなくても大きくネガティブに映ってしまうことがしばしばあります。スペシャリストにはその人の担当業務を任せればいいのですが、日本の会社ではみんな何でもやるのが当たり前なので、上司からするとそれができないことに面食らって運が悪いと評価にまで影響してしまうのですね。
つまり、平均的に何でもできる人としか接したことがないジェネラリスト上司達は、スペシャリスト達をどう扱っていいかわからないのです。私も日本の会社ではそういう場面を非常によく目にしました。
外資系では業績重視なのでスペシャリストが高く買われる
一方で、海外ではそもそも他人と同じことをするのがいいという考え方自体ありませんし、会社全体として業績があげられる方がいいので、社員全員が何でも平均的にできるより、1つの能力が突出している人を集める傾向にあります。
このため、外国人には日本の基準からすると考えられないほど、普通なことは苦手だけど専門分野には突出しているという人が非常にたくさんいます。
冒頭でも書いた通り、異なるスキルを持ったスペシャリストを何人も集めれば計り知れない力を出すことができます。たとえ事務処理や自分の領域以外の業務がうまくできなくても、それは他の人がフォローしてあげたり総務や一般職の人が代わりにやればいいので、できなくてもさほど問題視はしないというわけです。
では、ジェネラリストは海外や外資系でどう思われるかというと、残念ながら全ての能力が平均的であっても突出したものがないのであまり強い印象には残らないのではないかと思います。
日本でスペシャリストになるのはリスクもある。まずはジェネラリストになってもいいかも
ここまで読むと、それなら外資系に行くならスペシャリストじゃないとダメなんじゃん!!という印象を受けてしまうかもしれませんが、ちょっとお待ちください。必ずしもそうではありません。
確かに、今後外資系以外では絶対に働かないという強い信念と自信がある人はいいですが、日本に住んでいる限り日本の会社で働く可能性はゼロではないと思います。そうすると、外資系のために1つのスキルだけ磨くのはリスクがあり、ジェネラリスト寄りの会社に入った時に活躍しづらい可能性もあります。
また、外資系であっても上司が日本人であれば結局ジェネラリストの方が評価される場合もなくはないでしょう。
若い人であれば、すでに極めたい道が決まっている場合以外は、最初の数年はある程度ジェネラリスト的に一通りのスキルを磨き、そこから専門性を磨いていくのがおすすめです。
今すでに会社員として長いこと勤めた経験があり、これから外資系を目指したい場合は、これまで身につけたジェネラリストのスキルはそのまま保持しつつ、その中で自分が強みとするスキルを磨くのがいいのではないかと思います。
私の場合、新卒時に自分は絶対にスペシャリストだと思っていたものの、日本の会社に入社して見事ジェネラリストの洗礼を受けましたが、その後少しずつマーケティングやデータ分析のスキルを磨き、今ではデータ分析を得意とするプロジェクトマネージャーとして勤務しています。
今となっては、日本で生きる以上ジェネラリストとしてのスキルも持っておいてよかったなと思います。一旦ジェネラリストになっても後から1つの分野を伸ばすことはできるので、外資系を目指すなら天才的とまではいかなくてもそれが専門だと言って恥ずかしくないレベルのスキルを身に付けられるといいですね。
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