英語を使って仕事をするということは外国人と接するということ。そうなると、日本人とは違った食文化の人と食事に行く機会は増えてくるものです。
日本には食に関する規律がないためピンと来ないかもしれませんが、イスラム教やヒンドゥー教では日本人からは想像も付かないほど厳しく食のルールが決められており、そういった宗教の人と食事に行く時にはお店選びに非常に注意しなければなりません。
ここでは、実際に私が出会ったベジタリアンのエピソードやお店の選び方をお話ししますので、参考になさってください。
ヒンドゥー教は日本人が思う「ベジタリアン」とは次元が違う
ダイエットに対する世間全体の関心が高い昨今、ほとんどの人が「ベジタリアン」や「ヴィーガン」という言葉を聞いたことがあると思います。
日本では単純に菜食中心で肉類は食べない人がベジタリアンと呼ばれていますが、彼らも普通に味噌汁は飲みますし、煮物も食べますよね。
でも、本物の厳格なベジタリアン(厳密には「ヴィーガン」)は味噌汁も煮物も食べられないことがあるということをご存じでしょうか?
は??肉が入っていない味噌汁の何がいけないの??
とお思いかもしれません。
ですが、味噌汁にも煮物にもカツオだしを使うことが多いですよね。ヒンドゥー教では「肉(だけ)を食べてはいけない」のではなく、「動物性のものは一切口にしてはならない」という規律があるので、たとえダシであっても動物性のものを使っている場合食べることができないのです。
こうなってくると、日本でヒンドゥー教の人と食事をする時に大変なのがお店探し。後で詳しく書きますが、一見ベジタリアンをうたっているお店でも、ダシやドレッシングに動物性のものを使っていることがほとんどだからです。
ただ、人にもよるようですが、ヒンドゥー教徒でも卵や牛乳といったまだ命になっていないものや動物の命を取らなくても食べられるものは食べられることもあるようで、私のある取引先のヒンドゥー教徒は、「卵はケーキなどに混ぜてあれば食べられるけどゆで卵のような卵のままのものは無理」と言っていました。
ただし、食べられるものと食べられないものの線引きははっきりしていないらしく、個人の感覚によるところもあるそうです。思想的なことなので、そこはあまり追及しないでおきましょう。宗教のことをあまり興味本位であれこれ聞くのは好ましくありません。
イスラム教では食の規律が全て「ハラール」で決められている
イスラム教では豚が食べられないということは日本でも昔から知られていますが、それ以外にも食べ物に関するルールは細かく決められていて、これを「ハラール」と呼んでいます。
ハラールでは食肉からは必ず血液を抜いてから調理するため、雑菌の繁殖防止などイスラム教徒でなくても利点がたくさんありますし、ハラールを意識すると自分が食べるものに何が入っているかに気を配ることになるので、健康を保つ効果もあると言われています。
食べてはいけないものの具体例としては、まず豚に関わるものは全てダメです。豚といっても肉だけではなく当然ポークエキスも豚由来なので、これをダシなどに使った料理もダメ。また、ゼラチンも豚のコラーゲンを使っている場合があるので、ゼラチンを使っているグミもハラール対応のものでない限り食べることはできません。豚骨ラーメンなんて、エキスどころか豚の骨そのものでダシを取っているのでもちろんダメですね。
ポークエキスやゼラチンなんてあちこちで使っていますから、これもなかなか回避するのは難しいです。
食の文化の違いは大きい。軽んじるのは厳禁
もしかすると、ダシもエキスもダメだなんて厄介だと思うかもしれません。正直、私も毎回お店を予約してくれるアシスタントに細かく注文を付けるのは手間がかかるので、結局自分であちこち電話してお店を探したりしていて本当に時間がかかります。
でも、食は人間の根本といってもいいほど重要なもので、決して軽んじることはできません。よく、日本でも食べ物の恨みは怖いと言いますよね。これを軽視しては、うまく行く関係もうまくいかなくなってしまいます。
ヒンドゥー教徒は動物性のものが食べられない、イスラム教徒は豚が食べられないといったことは思想的なものですが、それならば日本人が犬の肉や昆虫食に抵抗があるのもある意味思想的なものです。
日本人にとって受け付けられない食べ物があるのと同じで、イスラム教徒やヒンドゥー教徒にとってもそれぞれ受け付けられないものがあるのです。国際人を目指す以上は、そういった異文化を受け入れて尊重しましょう。
日本でベジタリアンやイスラム教徒向けのお店を探すのは至難の業
先ほども少し書きましたが、一見ベジタリアンのお店でも、電話をして本当にベジタリアンなのか聞くと、実はダシにカツオを使っているとかドレッシングに動物性のものを使っているという場合がほとんどです。
動物性のものがダメだとされていない日本では、ベジタリアンのお店でもダシを使うのは不思議なことではないのでこちらは別に責めようとは一切思っていないのですが、たまに電話口でため息を付かれて「動物性のものを一切使わないなんて無理ですよお客さん」と言われてしまうことも・・・。
そうです、日本では普通そんなことは無理なんです。
私も最初のうちは甘く考えていて、このお店なら大丈夫だろうと思いベジタリアンの(と書かれている)お店にヒンドゥー教徒を連れていったところ、実は全ての料理にカツオダシを使っていてその人は何も食べられなかったということがありました。
日本で「ベジタリアン」と書かれているところは、思想的な本物のベジタリアンではなく単に「野菜中心のメニューを置いているお店」であることが多いので注意が必要です。
私は「郷に入れば郷に従え」だと思っているので、日本人が来日外国人に合わせて食文化を変えるべきなどとは思いませんが、それでも動物性のものを食べられない人がビジネスで来日する以上そういうお店を探すことは必須です。
では、どうすればいいのでしょうか?
一番安全なのは現地の人がやっているお店。もしくは裏ワザの「有名チェーン店」?!
まず、誰でもてっとり早く思いつくのは現地の人がやっている本格的なお店。例えば、ヒンドゥー教ならば東京にも探せばインド人がやっている完全ベジタリアン(ヴィーガン)のお店はいくつかあります。
私も、来日するメンバーの中にヒンドゥー教徒がいる時はもう毎回同じ場所にしてしまっています。他のメンバーのことを考えると別のお店にしたいのですが、条件に合致したお店を探すのに半日かかったりするので・・・。
イスラム教徒の場合は、「ハラール対応店」です。最近は日本でも少しずつイスラム教徒の食文化が知られてきていますし、イスラム教のインバウンド観光客が増えてきていることから、ハラール対応の飲食店が増えてきているそうです。都市部の場合、探せばそういうお店もあるでしょうから、そこなら安心です。
また、高級な懐石料理店も完全ベジタリアンやハラールに対応してくれることがあります。銀座の懐石料理店なんかだと、1人8000円~10000円くらいと比較的安価なお店でも一人ひとりの注文を詳しく聞いてくれたりしますよ。会社の公式な接待はお金も会社から出るはずですから、きちんとした懐石料理店はかなりおすすめです(魚介が苦手な私も便乗してこっそり魚介を使わない料理をお願いしたりしています)。
さて、では裏ワザの「有名チェーン店」が安全というのは一体どういうことでしょうか??
有名チェーンというのは、例えばマクドナルドやタコベルといった海外発の大手チェーン店のことです(この2つは例であって実際イスラム教徒やヒンドゥー教徒にとって安全かどうかはわかりません)。
海外発の大手チェーンならどこにでもあるので、ベジタリアンやイスラム教の人もたいてい知っていますよね。更に、お店探しに困る経験は彼ら自身が一番していて、困った時はいつも有名チェーンに駆け込んでいるので、どのメニューなら自分が食べられるかよく分かっているんだそうです。
彼らにとっての海外(日本など)で知らないお店に突入するよりも、馴染みのチェーン店の方が何の食材を使っているか分かっている分彼らには安全というわけですね。
さすがに接待でマクドナルドに連れて行くわけにはいきませんが、現場メンバーだけで仕事帰りに食事に行きたいけどお店が見つからないといった場合には、大手チェーンがおすすめですよ。もちろん、行く前にそこでいいかは本人たちにきちんと確認しましょうね。
いかがでしょうか。日本に住んでいるとなかなか意識しない食の規律ですが、イスラム教やヒンドゥー教の人と接する場合必ず対応が必要になります。いざ食事に招待するとなった時困らないよう、日頃から意識しておくといいと思います。また、ベジタリアンの場合人によっても許容範囲の度合いが違うので事前に確認するといいでしょう。
■海外出張関連記事
■その他の外資系・グローバル企業転職関連記事
- 給与交渉のやり方とタイミング。金額はいくらまでならOK?
- 英語を使った仕事50種類を分野・難易度別に徹底的に分析
- 英語勉強・転職FAQ(よくある質問)
- 会社の昇進に必要なTOEICの点数と英語力の実態
■英語を使って転職したい人は必見のサイト