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転職コラム

グローバル社員インタビュー⑤アイルランド人スーパーエディターTさん

投稿日:2018年12月20日 更新日:

実際の写真ではありません。

グローバルインタビュー第5弾、今回は前回に引続き外国人第二弾、今度はアイルランド人のTさんにインタビューです。

今回も相手は私の元部下。前職でとあるソフトウェアを作っていた時、そのソフトウェア内の英語をエディットするという役割でした。彼は英語ネイティブなので英語ができるのはもちろんですが、その知識がハンパない。多分、私が英語ネイティブだったとしてもそこまでの知識はないだろうというほどいろいろなことを知っています。もちろん文法のことも何を聞いても答えてくれます。元英語教師だったんですが、それも納得です。

今日はそんな彼に仕事の内容や英語を教えることの大変さを聞いてみました。

今回のインタビューは全て英語で行ったので、記事の内容は実際の口調とは異なります。

前職は英語講師。仕事の前に震災に見舞われる・・・

エイテン管理人(以下「エイテン」):それでは、まずは簡単に自己紹介をお願いします。

Tさん:僕はずっと英語に関わる仕事をしています。英語に関わるといっても僕はアイルランド人で英語は外国語ではないので、母国語である英語を使って海外の人と関わる仕事という意味ではなく英語の言語自体を専門としているという意味です。前職では栃木で英会話教室の講師をしていましたし、今はソフトウェアの英語のエディターをしています。要は英語圏人にとっての国語が得意だということですね。

エイテン:すごいですよね。私は国語が全然得意じゃなくて、多分英語ネイティブだったとしてもただ英語が話せるだけだったと思います。もしTさんが日本人だったら、漢字のことや日本語史のことをそれはそれはよく知っていたんじゃないかと思います。

Tさん:上には上がいるのでそんなことはないですけど、英語はずっと専門にしていることもあってやっぱり普通のネイティブよりは得意ですね。前職で英語を教えていた時も、もともと英語の知識があったおかげで救われたことは多かったです。英会話の講師って、スクールにもよるんですが新卒の社会人だったり中には学生のバイトだったりして、ただ英語が話せるだけなのでわかりやすい説明ができないような場合もあるんですよ。でも、ただ話せるだけでなく英語の仕組みやロジックを知っていれば分からずに悩んでいる生徒にもきちんと説明できるんです。

エイテン:本当にその通りですよね。とにかくただ話したいだけの人ならいいですが、しばらくすると絶対に疑問が出てくるので、それを解決するスキルは講師には不可欠なのではないかと思います。そういえば、話は変わりますが、東北の大震災って英会話講師時代に遭遇したって言っていましたよね?

Tさん:はい・・・あの時は本当に大変でした。僕は栃木にいたので東北ほどの被害はなかったですけど、地震が起こったまさにその時、トイレにいたんですよ(笑)。

エイテン:トイレっていうのは・・・個室ですか?

Tさん:そうです、個室です(笑)めちゃくちゃ揺れるわ水は止まるわでひどい目に遭いました。もちろん東北にいた人はこの比ではないんですが、地震をほとんど経験したことない僕には衝撃でしたね。

エイテン:そうでしょうね。あの時は私の周りの外国人もこぞって帰国しましたし。まあ、トイレでその後どうなったのかは詳しく聞かないことにします。

震災で帰国はしなかった。それは日本に対する熱い情熱があったから

エイテン:震災の後、アイルランドに帰ろうとは思いませんでしたか?やっぱり原発のこともありましたし、何せ地震大国以外の出身の人には考えられないような災害でしたから、私の周りで日本に残った外国人はあまりいませんでした。一時帰国にせよなんにせよ、だいたいの人は帰っていました。

Tさん:もちろん僕も帰ろうとは思いましたよ。でも、あの混乱の中で飛行機を取って帰るのも大変でしたし、せっかく日本で働くことができたのにあのまま帰るという選択肢はありませんでした。まだ仕事もあったし、そのまま日本に留まりたいという思いの方が大きかったですね。

エイテン:そういえば長いこと一緒に仕事をしていますが、何で日本に来たのかは聞いたことがなかったですね。

Tさん:やっぱり、日本の歴史や文化に興味があったのが一番大きいです。最初に来日したきっかけは ALT (Assistant Languaue Teacher) として日本で仕事をする機会に巡り合ったからですが、その後英語を専門とした仕事に運良く出会うことができたので、そのまま日本にいることができています。

エイテン:そんなに日本を好きでいてもらって光栄です。ALTとして来日してそのまま日本に定着する人はけっこう多いですね。

Tさん:はい、元々国語に強かったのが幸いしましたね。

日本で英語を教えることの大変さ

エイテン:外国人(日本人)に自分の言語(英語)を教える時、相手が何で分からないのかが分からなくて説明が大変なのではないかと思いますが、そこはどのように克服しましたか?

Tさん:最初はやっぱり手探りでしたが、これはもう経験しかないですね。まずは日本人に関わらず英語がどういうロジックなのかに基づいて説明するようにしていましたが、だんだん教えているうちに日本人が共通してつまずきやすいところが見えてきたので、次第に教え方のコツがつかめました。でも、言語面の違いより文化面の違いの方が大変だった気もします(笑)。

エイテン:どういうことかとてもよく分かる気がしますが、詳細を教えてもらえますか?

Tさん:はい、日本人って良くも悪くも控えめなので、例えばこっちが言っていることが聞き取れなくても遠慮して聞き返さないし、分からないことがあってもやっぱり聞いてくれないんですよ(笑)。お金を払って受講しにきてるんだからもっと堂々と聞いてくれていいんですけど、どうも羞恥心が邪魔をしてしまうようで。だから、もっと教えてあげたくても教えられない時があったのが歯がゆかったですね。まあ、後半はいわゆる「空気を読む」ことを僕も学んだので相手が遠慮して聞いてこなくてもこっちから聞きたそうなのを察して教えてあげるスキルが身につきましたけどね(笑)。

エイテン:あはは。すごくわかります。日本語特有の思考回路があるから共通の英語の悩みがあるのはもちろんですが、それ以前に遠慮して聞きたがらないのは本当にありますね。

言葉はただ書けばいいだけじゃない。エディターも大変

エイテン:さて、それでは直近のエディターの仕事についても少し聞かせてもらえますか?

Tさん:エディターというのは、簡単に言うと他の人が書いた英語を校正する仕事です。でも、言葉に関わることを一緒にしていたエイテンさんもよく知っていると思いますが、エディターとか翻訳みたいな仕事って機械翻訳がある程度成熟してきた現代はもう必要ないんじゃないかみたいに考えられるんですよね。でも、実際は全然そんなことはなくて、少なくとも今後数年か数十年は人間に取って代わることは絶対にないと思います。まず、機械翻訳で人間並みの自然な文章を書くことなんて現在はとうてい不可能だし、状況に応じて柔軟に文章を書き換える必要もありますよね。例えスタイルガイド(そのソフトウェアにおいての正書法のルール)を作ったとしても例外がある場合もあるしその時その時に応じて人間の判断が必要になる。それは機械にはできませんからね。

エイテン:ものすごくよく分かります。私も、極端な話「あなたの仕事なんて数年したらもう必要なくなるでしょ」みたいなことを私の仕事を全く知らないような人から何人も言われました。

Tさん:ね、ひどいですよね(笑)。あと、エディターが必要な理由としては大きなプロジェクトになると何人もの人が文章を書くことになりますが、当然一人一人クセがあってスタイルがバラバラなんですよね。例えば、ある人はやたら句読点を使うけど別の人はほとんど句読点を使わないとします。そうすると、句読点だらけの文章があったと思ったら次のページから突然句読点が全くないなんてことにもなるんです。もしくは、さっきまではイギリス英語のつづりだったのに突然アメリカ英語になるとか。エディターは、そんな複数の人が書いたバラバラな英語に統一感を持たせるため大きなプロジェクトでは必須です。

エイテン:はい、よーく知っています。一緒に仕事をしていた時は本当に助けられました。

Tさん:それと・・・僕は商品のキャッチコピーも書いたりするじゃないですか。もしくは、日本人が考えた英語の商品名を英語として自然なように直したり。あれをやっていて本当に心から思うのが、日本人がキャッチコピーや商品名を英語で作るのはやめてってことです。例えばなんですけど、マクドナルドの I’m loving it って文法的にはおかしいですがキャッチコピーとしては秀逸なんですよ。でも、それはネイティブじゃないとわからない。非ネイティブが彼らの感覚でかっこいい英語だと思って作っても、英語ネイティブの耳からするととんでもなくダサかったりするんですよね。日本人も同じような経験があるんじゃないですかね?外国人がおもしろい日本語でタトゥーをしていたりして笑ったこと。それと同じなんですけど、やっぱり英語のキャッチコピーの校正とかを頼まれちゃう。お願いだから英語じゃなくて日本語のままちょうだいって思います。おかしな英語にされた状態で受け取るとどうしてもその英語の先入観が邪魔するので、日本語で送ってもらいたいです。

エイテン:ですよねえ・・・代わりにお詫びします。私も開発や広報チームからそういう依頼を受ける時は最初に今の内容を説明するんですが、なかなか理解が得られず・・・。言葉に関わる仕事をすると、常に文化に違いに直面しますね。ともあれ、今日は初めて日本に来たきっかけなどを聞けてよかったです。ありがとうございました!  

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なお、上の写真は海外出張中に現地の提携会社の仲間達と撮影した写真です。赤い服が私です。