英語で転職を目指している人の中には、海外移住を目標にしている人もいると思います。
海外移住を目標とするのは私自身とてもおすすめしていますが、心構えによっては後で失敗してしまうこともあるので注意が必要です。
今回は、海外に過度に期待しすぎたり手続き的な問題で失敗してしまった例をご紹介します。
心構えのせいで失敗した人の例
海外に行けば全て解決すると思ったのに現実は違った
一番重要なポイントを最初に書きますが、理想の国などというものはこの世界には存在しません。このため、海外にさえ行けば全て解決するはず!という考えで移住するのは非常に危険です。
英語を含み外国語を勉強する人の中には、今いる国(日本)がいやで将来海外に行きたいからという理由で勉強しているという人も少なからずいるのではないかと思います。
ですが、今自分がいる状況を改善していい状態に持っていくことができるかどうかは結局あなたの能力次第なのです。
隣の芝生が青く見えるのと同じで海外ばかりが輝いて見えるかもしれませんが、どこの国もそれなりに問題を抱えています。例えば、アメリカは日本よりは男女平等で平均給与も高いですが、その代わり人種の問題や医療費の高さは他のどこの国よりも深刻なのではないかと思います。それに、どこの国にも嫌な人はいます。
このため、海外に行けば何もかも解決するという過度な期待を抱いて海外生活を始めると、最初の1〜2年はいいかもしれませんが、次第にその国の嫌な部分が見えてきて最終的には落胆することにもなりかねません。
私が常々思うのは、転職にしても移住にしても目的があって前向きにやるべきことであって、現状から逃げるためにやることではないということです。
今海外への移住を考えている方は、是非自分の目的が「逃げ」なのか「攻め」なのかしっかり見極めていただければと思います。
もし自分が移住したい理由が「もう日本にいたくないから」とか「海外に移住すれば今より幸せになれるはずだから」という「逃げ」である場合、もう少しよく考えた方がいいかもしれません。
「XXの仕事に就くためにアメリカに行く」、「夢のために留学する」という確固たる目標がある場合、それは「攻め」の移住なので大いにおすすめしますが、「逃げ」の移住には多くの場合過度な期待が伴い、それが裏切られた時の精神的ダメージが大きいからです。
今すぐ移住しないと身の危険がある場合は別ですが、考える時間があるならば自分の将来のためには何が一番いいのかじっくり考えてみてください。
旅行で気に入って移住したら思ったのと違った
これも過度な期待を抱いて失敗するのと似ていますが、旅行するのと住むのは全く違います。このため、旅行で訪れて最高だったからといって即移住先に決めてしまうのは注意が必要です。
その一番大きな理由は現地の人々との関わり。
人の態度というのは、一度きりしか会うことがない旅行者には優しくても、自分たちの街に住んで今後も関わることになると様変わりすることがあるのです。
何故なら、旅行者と移住者には以下の決定的な違いがあるから。
- 旅行者(お客様):利害関係がなく、現地人の生活を脅かすことはない
- 移住者(部下・後輩):利害関係があり、現地人の生活を脅かす可能性がある
※日頃から多くの観光客がいて関わらざるを得ない地域の人や、旅行従事者は除きます。
違いははっきりしていますよね。旅行者はただのお客様ですが、それがその土地に住むことになると、先にいた住人にとってはもはやお客様ではなく「後輩」という位置付けになるのです。
地域のルールを知らないよそ者が住むと、自分たちに迷惑をかけて平穏な生活を脅かすかもしれません。そうなると、現地の人もあなたが旅行者だった頃のようにニコニコ接するのではなく、厳しい目で見るようになるでしょう。
お客さんとして行った時優しかった店員が、入社して自分の先輩になった途端に厳しくなるようなものと考えてください。
人との関わりだけでなく、他にも気候や食べ物、税金、住宅事情、外国人受け入れ体制、政治、教育、交通、医療などなど、住んでみると短期間の旅行だけでは実感できなかった部分が見えることになるので、後々こんなはずじゃなかった・・・とならないためにも移住する前にある程度長期滞在してみるのがおすすめです。どんなに風景や街並みが最高でも、国のシステムが外国人に不利など様々な理由で住むには向かない場所はたくさんあります。
文化の違いを甘く見たことで現地に溶け込めなかった
このサイトで私もたびたび口にしていることですが、文化の違いは非常に重大な問題です。軽んじることもできなければ、日本人は標準的でクセもないから特に苦労することはないだろうとタカをくくるのも厳禁です。
海外の人との付き合いやコミュニケーションがうまく行かないのは、言語面の問題以上に文化面の問題であることが多いですし、日本人は決して標準的ではありません。日本人には日本人特有のクセがあるのです。
このため、文化の違いを甘く見て海外でも日本にいる時と同じように振舞ってしまうと、現地の人から不信感を買って住みづらくなることも十分あり得ます。
例えば、日本に住んでいる外国人のことを考えていただければわかりやすいのではないでしょうか。出身国にもよりますが、外国人と日本人の間ではだいたい騒音やゴミが問題になっていると思います。でも、これは決して彼らのマナーが悪いのではなく、単純に外国人が日本のマナーを知らないから起こっていることなのです。そして、言葉が通じにくいのでなかなかそのことを伝えるのも難しく、ずっと解決しない状態が続きます。
これは海外にいる日本人も全く同じです。
日本人は、日本でのマナーはもちろん知っていてみんなとてもよく守っていますが、海外のマナーは必ずしも知っているわけではありません。
例えば、日本人は目を見て挨拶しなかったり、家で魚を焼くのが好きな人もいます。そして、これが国によってはマナーがよくないと映ってしまうこともあるのです。
ここではアメリカのことを例に話しますが、まずアメリカでは相手の目を見ずに話すことは失礼です。魚を焼くことにしても、欧米では馴染みがないので近所の人から異臭だと思われることがあります(ヨーロッパで騒ぎになった例も聞いたことがあります)。でも、英語が苦手だと近所の人は注意もできませんし、そもそも挨拶をする時自分の目も見ない人に対して話しかける気にもなれないかもしれません。
「そんなの一部の人だけだろう」とか「大げさだ」と思った人もいるかもしれませんが、これこそが文化の違いなのです。
この例を読んで大げさだと思った人こそ注意が必要で、どんなに日本でマナーを守っていても、海外でも同じマナーが通じるとは限らないので、その国では何がマナーとされているのか注意深く観察することをおすすめします。
文化の違いは、マナーだけでなく考え方の違いや仕事のしかたの違いなど、全てに共通します。
日本人との付き合いをおろそかにして失敗した
海外に移住したい人の中には、日本から出たくて海外に行くんだし自分は英語もできるから外国人(現地の人)とだけ付き合う!という人もいるかもしれません。
現地の人を中心に付き合うこと自体は悪いことではありませんが、それが行き過ぎて外国人ぶったり、日本人との付き合いをおろそかにするのはおすすめできません。
まず、どこの国の人であれ、どんなに長いこと海外に住んでもその国らしさは消えませんし、現地の人からも当然外国人だと捉えられます。日本人が海外に行っても日本人のままです。日本に何十年もいる外国人タレントも、やはりどこか外国人らしさが残っていることをイメージしていただければ分かりやすいと思います。
そんな日本人が海外で同じ日本人をおろそかにすれば、周りの日本人からは感じが悪いと思われますし、当然外国人からも自国民同士で仲良くしないあなたのことは奇妙に映ってしまい、結局どちらともうまく行かないという構図にもなりかねません。私も、留学先でそういう状況になった日本人の話を何度も聞いたことがあります。それだけ海外に行けば自分は変わるはずと思っている人は多いようです。
結局自然体でいるのが一番。どこに行っても、自分のアイデンティティは大切にしつつ、相手の文化を受け入れればいいのです。
英語が苦手でも優しくしてくれると思ったのに違った
海外では、英語が苦手でも自分は外国人(日本人)なんだから許してもらえるはず、という思い込みも大きな間違いです。確かにネイティブから見ればネイティブではないことはすぐに分かりますが、だからといって苦手でも分かってくれるでしょ、優しくするべきでしょ、というのはちょっと違うかな・・・と私は思います。
もちろん、英語が苦手なのに仕事の辞令で海外に行くことになった場合は英語ができなくても仕方ないですが、それでも現地の人に歩み寄る姿勢を見せて敬意を払うべきですし、自分で希望して行くならなおさら生活に不自由ない英語力が必要だということはしっかり意識して行くべきです。
それに、海外の人は英語が苦手な人に対してそんなに優しくありません(笑)。
実際、英語がおぼつかない日本人に対して、あからさまにイラついたり理解できないほど早いスピードで話す現地の人を何人も見たことがあります。日本人は日本語がわからない外国人に対してもとても辛抱強く話を聞いたりカタコトの英語で説明したりする真面目で親切な人が多いので面食らうかもしれませんが、海外ではいくら英語が苦手でもそんなに優しくしてくれないことが多々あります。
ただし、彼らも別にわざと意地悪をしようとしているわけではなく、単純に普段通りに仕事をしているだけ(=ある意味平等)の場合がほとんどなので、ぜひ涙目にならず頑張って英語を話していただければと思います。
手続き上の問題で失敗した例
部屋探しでトラブルに巻き込まれた
どこの国に住むにせよ住居は必須ですが、海外で家を探すのは大変です。土地勘のない場所では調べなければならないことも山ほどありますし、リサーチも不動産会社とのやり取りも全て英語でこなすことになります。
更に、海外はどこの国であっても日本ほどインフラがきちんとしておらず、内見の時にはきちんと出ていたガスや水道がいざ住んでみると調子が悪いなんていうこともよくあります。
また、物件自体は良くても、海外では大家と直接契約になることも多いので悪い大家にあたると自然に壊れた設備を直してくれなかったり、敷金を返してくれないといったトラブルも日本以上によくあるようです。
部屋を探す時は必ず内見をした上で、電気・ガス・水道は隅々までチェック、スイッチ類やコンロも全て動作することを面倒でも全てチェックするようにしましょう。大家さんがどんな人かを見極めるのも重要です。世間話の一環で過去の住人の話を聞いて、何かトラブルの話をしてきたら居住者側の問題だったのか大家側なのか見極めるといいでしょう。
ビザが更新できないなどの問題で帰国せざるを得なかった
海外に住むのに一番重要なのがビザ。これがないと海外には長期滞在できません。ビザには様々な種類があって、主に学生ビザ、就労ビザ(一般)、就労ビザ(スペシャリスト)、就労ビザ(駐在)、家族ビザなどがありますが、移住するなら最低でも学生ビザか一般の就労ビザは必要になります。
国によっても違うので詳細は説明できませんが、ビザの種類によって就くことができる仕事の種類も変わりますし、滞在できる期間も変わります。就労ビザの場合発行にお金がかかるのでスポンサー(雇用主)を見つけた上で必要書類を会社側に届けてもらうのが一般的な流れになりますが、この時手違いがあってビザの発行がうまくいかないような事態になったら移住自体ができなくなってしまうので、人任せにしたりせずきちんと自分で一つ一つのステップを確認しながら行うようにしてください。
まとめ:トラブルを受け入れる覚悟がある人は是非移住すべき。そうでない人はじっくり考えよう
いかがでしょうか。海外に住むのは理想ばかりでは成り立ちませんし、嫌な人もいればトラブルも付き物です。
もしそれを聞いて尻込みしてしまったり、何の根拠もなく「自分は大丈夫」「何とかなる」と思っている人はもう少し時間をかけて考える必要があるかもしれません。トラブルが怖くて移住を躊躇するようだと移住先ですぐに心が折れるかもしれませんし、根拠のない自信もいざ現実を見た時に受けるダメージが大きい可能性があります。
すでに海外でのトラブルを一通り経験している旅慣れた人や、海外に住んだ時どんなトラブルが起こるか具体的に想像できている人は、是非移住に向けて準備を進めていただければと思います。
こういうトラブル対処能力の高い人は、行き当たりばったりの人と違って実際トラブルに遭ってもきちんと対処できる確率が高いのです。
結局のところ、移住に失敗してもやり直すことはできるのですが、心構えが間違っているとそこから立ち直るのにより時間がかかってしまうことになるので、事前にしっかりとした目標設定と心構えをして是非楽しい移住ライフを送っていただければと思います。
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