日本には様々な種類のカタカナがあります。その多くは外来語で、英語から来ているものもあればドイツ語から来ているものもありますが、必ずしも日本で正しい意味で使われているとは限りません。
この記事では、英語としてはきちんと存在するものの、日本では本来とは違った意味で使われているものを10種類紹介し、本来の意味を解説していきたいと思います。
意味を間違って使っている英語は、そもそも英語には存在しない日本人が作った和製英語よりも返って通じにくい場合があるのでご注意ください。
PR
よく、就職活動で「自己PRを記入してください」という言い回しを耳にしたり、テレビで「それではここで観光協会の皆さんに町の名物をPRしていただきましょう!」といった表現を聞きますが、これは正直微妙です。
PRというのは “public relations” の略ですが、日本語にすると「広報活動」という意味です。これは広報活動全般のことを指し、ある特定の商品を宣伝したり自分自身を企業に売り込む場合に使うのは少し意味がズレています。
何がズレているのかは、先ほどの就職活動やテレビの例に出てきた「PR」を「広報活動」に置き換えたら分かるのではないかと思います。置き換えてみると、「自己広報活動」や「名物を広報活動してください」となりますが、これだと違和感がありますよね?英語では、public relations という言葉は広報の職種や部署のこと、また企業の広報活動のことを指して使うため、先ほどの例のような場合に使うと違和感があるのです。
それでは日本語で使っている「PR」の正しい英語は何なのかというと、それはその時によって違うのではないかと思います。たとえば、就職の時の自己PRについてはあまり直訳はなく、”career objectives”(キャリアの目標)のような書き方が一般的だと思います。名物を「PR」したい場合は、”promote the local specialties” といったところでしょうか。
カンニング (cunning)
これは割と有名ですが、カンニング (cunning) という英語はテストを盗み見るという意味ではなく、「狡猾さ、抜け目なさ」という意味の名詞です。
ではテストを盗み見るという意味の英語はというと “cheating” と言い、不正という意味です。ゲームを本来よりも簡単に攻略するための秘密のコマンドを「チートコード」(cheat code) というのを聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これに -ing を付けたものですね。
Cunning は名詞で使えば単純に狡猾さという意味になりますが、これを英語で動詞風に使ってしまうと全く違う品のない言葉に聞こえてしまうこともあるそうなので要注意です。どう聞こえるのかはここに書くことはできませんが、私の元同僚のカナダ人やアメリカ人の男性5~6人がそう言って笑っていました。
インパクト (impact)
「強烈なインパクト」「インパクトがある」という言葉をよく聞きますが、英語の “impact” は意味が違います。
日本語で言う「インパクト」はきちんとした日本語にすると「印象」という意味ではないかと思いますが、英語の “impact” は「影響(を与える)」という名詞または動詞で、「印象」という意味はありません。
もし英語で「(ある物に)強烈な印象がある」という意味で “wow, it has a strong impact” などと言ってしまうと何か強い影響力があるのかな?と思われてしまうので、そういう場合は “it gives a strong impression” と言うといいでしょう。
スマート (smart)
これはもうほとんどの人が知っていますね。スマート (smart) は英語では賢いという意味で、日本語で使うような「細い」という意味はありません。
細い、痩せているという意味の英語は “slim” が最も適切で、他にも “lean”(体が引き締まった)、”thin”(痩せ細ったという悪い意味)などの言い方があります。
日本語でよく聞く間違ったカタカナがつい英語でも出てしまうことは私もたまにありますが、誤って使ってしまわないよう注意しましょう。
クレーム (claim)
日本ではクレーム (claim) という言葉が顧客の苦情や不平・不満(を述べる)という意味で使われていますが、英語では “claim” は動詞として使った場合「主張する、請求する」という意味で、苦情を寄せるという意味にはなりません。
整理するとこうなります。これが、本来の英語の “claim” の意味です。
Claim(名詞):主張、請求、申し立て
Claim(動詞):主張する、請求する
英語でも、顧客のクレームという意味で “customer claim” という言葉を使いますが、意味としては顧客の苦情というよりは「顧客の申し立て(苦情も含む)」に近いです。
このため、もし英語で「苦情」と言いたい場合は、”complaint” (名詞)と言った方がいいでしょう。動詞の場合、 “complain” になります。
ちなみに、 “customer claim” という言葉がどのくらいよく使われるのかGoogleで検索したところ、ヒット数は3億1千万件でした。一方、 “customer complaint” は5億3千万件ヒットしたので、そちらの方が英語圏ではよく使われるということになると思います。
マンション (mansion)
日本ではマンション (mansion) は鉄筋コンクリートで3階建て以上の集合住宅、アパート (apartment) は木造の2階建て以下の集合住宅を指しますが、英語では集合住宅は全て “apartment” になります。
“Mansion” というのは「屋敷」、「邸宅」、「館」という意味で、宮殿のようなお金持ちの家を想像されてしまうので、そういう豪邸に住んでいる場合以外は “apartment” または “flat” と言うのが無難です。間違って “I live in a mansion” と言ってしまうと、「私は屋敷に住んでいます」という意味になるのでご注意ください(笑)。
ナイーブ (naive)
カタカナでナイーブと言った場合、「繊細な」、「純粋な」といったいい意味を指すことが多いですが、英語の “naive” は「純真な、愚鈍な、甘ったれな、世間知らずな」というネガティブな意味で、いい意味に使われることはほとんどないと思います。
もし、相手のことを純粋だと褒めたくて “you are naive!” と言ってしまったら確実に気を悪くされてしまうので、くれぐれも言わないよう注意しましょう。そもそも英語圏で相手のことを純粋だというのが褒め言葉になるかどうかは置いておいて(そもそも人のことを純粋だというのはバカにしていると受け取られる可能性も)、もし相手に対して純粋だと言いたい場合使うべき言葉は “pure” になると思います。
リフォーム (reform)
家を改築するという意味で使われる「リフォーム」ですが、英語で “reform” は「改心する、刷新する」という意味で家を改築するという意味はありません。
家の改築は “renovation” と言うので覚えておきましょう。家ではなく洋服のリフォームについては “remake” と言います。こちらの方が日本人にも馴染みのあるシンプルな言葉ですね。
バイク (bike)
日本でバイクというとエンジンのついた自動二輪車のことを想像しますが、英語で “bike” と言った場合通常エンジンのない自転車のことを指します。
英語圏ではエンジンの付いたバイクのことは “motorcycle”(アメリカ)や “motorbike”(イギリス)と言いますが、紛らわしいのは英語圏でも “bike” をエンジンが付いたバイクという意味で使う場合があるということです。
多くは “bike” と言うと自転車のことですが、もし自転車のことか自動二輪車のことか通じにくかった場合は、エンジンのない自転車= bicycle、エンジンのある二輪車= motorcycle と使い分ければ確実だと思います。
トランプ (trump)
某元大統領のことではなくカードゲームの話です(笑)。
英語ではカードゲームのことはシンプルに “cards” と言い、「トランプ」とは言いません。英語の “trump” がどういう意味かというと、「切り札、奥の手」という意味で、いわゆるカードゲームという意味ではありません。
何故カードゲームのことを日本で「トランプ」と呼ぶようになったかについては、アメリカ人がカードで遊んでいる時に「切り札を出す」という意味で “trump” と言ったのを聞いた日本人が、アメリカではカードゲームのことを「トランプ」と言うんだと勘違いしてそう呼ぶようになったと言われています。
以上、日本で意味が違って使われている英語をご紹介しました。他にもまだまだあるので、随時記事を更新したいと思います。
また、英語には存在しない日本人が作り出した和製英語についてはこちらの記事で書いていますので、合わせて参考にしてください。
日本人が作った和製英語20個の語源を調べてみた